最高裁判所第三小法廷 昭和32(オ)543 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人伊藤幸人の上告理由第一点について。
訴訟が裁判をなすに熟するときは、裁判所は職権をもつて弁論を終結することが
でき、また閉ぢた弁論を再開すると否とは、裁判所の裁量に委ねられている事項で
あるから、原審が、所論のように弁論を終結し、上告人の弁論再開の申請を採用せ
ず、上告人は所論新主張及び新証拠の申出をなすに由なかつたとしても、これを違
法と目することはできない。またその他の所論は独自の見解にもとづく主張に過ぎ
ないので、論旨はすべて採用できない。
同第二点について。
所論は、原判決の引用する一審判決が、挙示の証拠により、所論判示事実を認定
したことは実験則に反すると主張する。しかし、一審判決挙示の証拠によれば、所
論一審判示事実を認めるに足り、実験則に反する認定ということはできない。論旨
は原判決において適法になした事実の確定を非難するもので採用できない。
同第三点について。
所論は、原審において主張判断のない事項にもとづく主張であつて採用できない、
のみならず、かりに所論のように上告人に過失なく、被上告人に過失があつたとし
ても、そのことから直ちに上告人が無権利者たる渡辺修蔵から売買により本件建物
の所有権を取得するいわれはない。論旨は理由がない。
上告代理人元林義治の上告理由第六の一について。
民訴一四七条には口頭弁論の方式に関する規定の尊守は調書によつてのみこれを
証することができる旨明定してあり、原審昭和三元年一二月一九日午前一〇時の口
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頭弁論調書には「裁判長は合議の上、弁論を終結する旨を告げ、裁判言渡期日を来
る昭和三二年一月二八日午前一〇時と指定して告知した」と明記されているから、
右調書の記載に反する口頭弁論の方式に関する事項を主張する所論は理由がない。
同第六の二について。
裁判所は、訴訟が判決に熟すると認めるときは職権をもつて弁論を終結しうるの
であつて、必ずしも、当事者に新たな攻撃防禦の方法を提出させるための機会を与
えるために、弁論を続行し、または閉ぢた弁論を再開しなければならないものでは
ないから、所論は採用しえない。
同第六の二について。
原審において当事者が一審口頭弁論の結果を陳述したことは記録上明らかであり、
控訴審において当事者が一審における弁論の結果を陳述したときは、一審において
提出された一切の訴訟資料はすべて控訴審に顕出されたものとなるのであるから、
論旨は理由がない。
同第六の三について。
原審は上告人の申出に係る文書取寄申請を却下することなく弁論を終結している
ことは所論のとおりである。しかし、記録上、原審は所論申請を取調の必要がない
ものとして、暗黙に排斥したものであることが窺われるから、原判決には所論の違
法はない。論旨は理由がない。
同第六の四について。
原審が上告人の申出に係る文書取寄申請を許可したが、その嘱託手続を採つた形
跡は記録上認めえないことは所論のとおりである。しかし、所論申請書はこれにも
とづいて文書の取寄せをなすに由ない不備なものであることは記録上明らかである
から、原審は所論嘱託手続を採らなかつたとしても違法ではない。論旨は理由がな
い。
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同第六の五について。
本件訴訟の経過に徴すると、所論原審の措置は違法ではない。所論は要するに独
自の見解にもとづく主張であつて、論旨は理由がない。
同第六の六について。
原判決が一審判決の理由中どの部分を引用したものであるかは、原判文上明瞭で
あるから、所論は理由がない。
同第六の七について。
所論は、要するに、原判決の引用する一審判決には経験則違反、条理違反、理由
不備、理由齟齬、ないし証拠によらないで事実を認定した違法があるとの主張に帰
する。しかし、一審判決の所論認定は、その挙示する証拠に照らし、いずれも首肯
するに足り、その間、所論の違法は認められない。論旨はすべて採用できない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 高 橋 潔
裁判官 島 保
裁判官 垂 水 克 己
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